マドリードのカフェ

  • Café Gijón (©Álvaro López del Cerro)
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Bloggin Madrid

2022 年3月22日

マドリードの歴史の大半は、19世紀初頭から常連の集いで街の文化生活を豊かにしていたカフェの、大理石のテーブルで綴られ、多くのカフェがその後に続きました。そうしたカフェへ出かけてみましょう…。文:シルビア・ロバ(Silvia Roba)

「カフェに行き、ソファに座り、ガス灯に照らされる」。そう述べたのは、スペイン前衛派作家・ジャーナリストのラモン・ゴメス・デ・ラ・セルナです。19世紀初頭からマドリードで大流行した数多くのカフェの一つであるCafé del Pomboで、彼はテルトゥリア(常連たちの集い、サロン)を始めました。

そうしたカフェの前身は、清涼飲料水やアイスクリームを販売する「ボティジェリア」と呼ばれる小さな店でした。ボティジェリアは通りすがりに立ち寄るような場所であったにもかかわらず、人々が集まって会話を交わす場所になりました。より快適に話せる場として、テーブルと椅子のあるカフェがマドリードで急に増え始めます。ほとんどの店が豪邸の応接間風のインテリアで、新しくガス灯が導入されていました。Café del Pomboがあったのはプエルタ・デル・ソル(Puerta del Sol)のすぐ近くです。他にも、Café de LevanteCafé del PríncipeCafé del SuizoCafé de Fornosなど、カフェと文学を情熱で組み合わせた店が多数ありました。今も残っている店はわずかですが、当時のカフェの精神を思い出させる店もいくつかあります。そうしたカフェへ行ってみましょう!

CAFÉ GIJÓN

木材仕上げで大きな窓が3つある茶色の大理石のファサードは、マドリードの素晴らしい象徴の一つ。自分たちの声で世界を変えようとしていた作家や知識人がこうした場所に集まっていた時代を、思い出させてくれる店です。Café Gijónはグメルシンド・ガルシア氏の粘り強さによって、1888515に開店しました。店名は彼が郷愁にかられ、生まれ故郷の街の名を冠したものです。

現在この歴史的な店には、テルトゥリアの時代の黒い大理石のテーブルや、ガーネット色とアイボリーのタイルの床などの装飾要素が残っています。客は観劇後に、ここで政治、闘牛、時事問題について話をしていました。常連客としては、ベニート・ペレス・ガルドスサンティアゴ・ラモン・イ・カハル、店のテラスがお気に入りだったラモン・マリア・デル・バジェ=インクランの名が挙げられます。また、フェデリコ・ガルシア・ロルカ、サルバドール・ダリ、ルイス・ブニュエルや、革新的な女性であったマルハ・マジョ、マリア・ブランチャル、セリア・ガメスも馴染みの客でした。

人々はインスピレーションを求めてCafé Gijónに足を運んでいました。ヘラルド・ディエゴ、カミロ・ホセ・セラ、フランシスコ・ウンブラルも常連でした。俳優・監督・作家のフェルナンド・フェルナン・ゴメスも常連客で、このカフェの名を冠した文学賞を創設しました。当時と同じ雰囲気が楽しめる同店は、幾度も改修が行われてきました。その一つを、サイネテ(一幕物の風俗喜劇)作者のカルロス・アルニチェスの息子で建築家のカルロス・アルニチェス・モロが1949年に行い、ガス灯を電灯に換え、壁にオーク材を使用しました。増え始めたカフェに後れを取らないよう、モダンな趣を加えようとしたものですが、Café Gijónに取って代われるような店は他にありませんでした。

CAFÉ COMERCIAL

この店の回転ドアをよく通ったのは、詩人のアントニオ・マチャドです。1887321に開店したCafé Comercialには、彼専用のテーブルがありました。マチャドと同様に、エドガル・ネビル、エンリケ・ハルディエル・ポンセラ、ブラス・デ・オテロ、ガブリエル・セラヤ、グロリア・フエルテスも常連客でした。同店のテルトゥリアと並んで有名だったのがチェスクラブです。1909年に店のオーナーになったアルトゥロ・コントレラス・セプルベダが、2階のビリヤード台の隣に設置したものです。

最初のオーナーはアントニオ・ゴメス・フェルナンデスで、店名を決め、装飾に格天井を取り入れました。創業時にすでにエレガントな場所で、バンドゥリア、ピアノ、バイオリン、チェロのコンサートを行うのに最適な店でした。

2015年の閉店を経て2年後に再開し、活気を取り戻したCafé Comercialにとって、音楽は今も重要な要素であり続けています。店には賑わいを見せるテラスがあり、隣の新聞売店は1894年の開店以来、カフェの客に利用されています。インテリアの一部は創業当時のままですが、新しい要素も加わっており、その中の一つに、「何者かであるには、いなければならない」(para ser hay que estar)という示唆に富んだ文章があります。

EL ESPEJO NOUVEAU

Café Gijónのすぐ近くにあるこの有名なカフェは、見た目ほど古くなく、1978年に19世紀初頭のパリのカフェのスタイルでオープンしました。これは恐らく、真のアール・ヌーヴォーのバルがマドリードには存在しなかったことへの、埋め合わせを意図したものだったのでしょう。見事なガラス窓とシャンデリアがある美しい別棟と、国立図書館を眺めながら朝ごはんや軽食を取るのにぴったりのテラス・庭園は、どちらも心地よくエレガントな場所です。

CAFÉ DE RUIZ

レトロやヴィンテージインテリアの流行よりかなり前の70年代、マドリードの社会生活をテルトゥリアで活気づけていた20世紀のスタイルを復活させようとするカフェが、マラサーニャ(Malasaña地区を中心に誕生していました。コーヒーを飲みながら雑談や会話が楽しめる、文化の中心地となることを目指していたのです。こうしたカフェの大半で、インテリアの要素に木材が使用され、ドス・デ・マヨ広場(Plaza del Dos de Mayo)横に友人グループが創業したこのカフェも、例外ではありませんでした。現在所有者は変わっていますが、鏡や円形テーブルなど、創業当時の美しさが維持されています。店の名物には、コーヒーリキュールで作られたカクテル「ホワイト・ルシアン」などがあります。

CAFÉ MANUELA

1979年にマラサーニャ地区の中心部に開店。当時のマドリード文化の夜明けに、大きく関与したカフェの一つでした。マドリードのサブカルチャー運動「モビーダ」の最盛期、このカフェに足を運んだことがある、あるいは常連だったのは、ペドロ・アルモドバル、ハビエル・クラエ、カルメン・マルティン・ガイテ、マヌエル・ピーニャ、チチョ・サンチェス・フェルロシオなど。店のインテリアが想起させる昔のカフェと同様に、繰り広げられる雑談が終わるのは夜遅くでした。

フアン・マントラナ・ゴヤネスが創業し、「ラ・マヌエラ」として知られたこのカフェは、社会生活の扇動者的存在で、コンサート、詩の朗読会、展覧会が常に行われていました。現在はヘスス・ゲレロが店を取り仕切り、当時の本質を維持し続けています。赤いファサードがトレードマークです。

AJENJO CAFÉ

「Café Ajenjoは、子供たちが通りで輪回しで遊び、家に電話もテレビもなかった時代に設定されています」。マラサーニャ地区にあるタイムマシンそのものの同店の責任者たちは、こう述べています。このカフェが開店したのは1978年ですが、タイムマシンの行き先は19世紀。大理石の低いテーブル、カウンターと壁の木材、昔風のレジ、古い写真…。そして、薄暗い照明が落ち着いた雰囲気を醸し出しています。

CAFÉ DE BELÉN

Café Belénは1983年の開店以来、チュエカ(Chueca)地区住民のお気に入りスポットの一つになっています。2014年に一度閉店しましたが、若干の改修(床はセメントタイルを維持し、壁はブルーに変更)を経て、2015年4月に友人たちが復活させ、有名なカクテル、オーガニックティー、風味豊かなコーヒーを提供し続けています。展覧会も行う店内には、温かみのある雰囲気が満ちあふれています。

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  • De tapas por Madrid
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  • Casa Mira. Foto: Álvaro López del Cerro
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    マドリードのグルメ(PDF)
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  • Faro de Moncloa. Verano 2023. Foto: Alváro López del Cerro © Madrid Destino
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